MAPO堂

最終決定は存在しない。

人間観察の賜物。モーム傑作選

以前読んだモームの「月と六ペンス」が結構面白かったので、他の本も買ってみました。

結論としては、さらにおもしろかった。

ジゴロとジゴレット: モーム傑作選 (新潮文庫)

ジゴロとジゴレット: モーム傑作選 (新潮文庫)

傑作選というだけあって、どの短編もおもしろかったのですが、「ジェイン」という短編の中の一節を紹介します。

「(前略)でもそのうちわかってきたの。これは、あたしがほんとのことをいうからだって。ほら、ほんとのことをいう人って、ほとんどいないじゃない。だからおかしくきこえるのよ。そのうちだれかがそれに気づく日がやってくる。そうすると、みんながいつもほんとのことばかりいうようになる、そうなったら、ほんとのことだって、ちっともおかしくなくなっちゃうわ」

「じゃあ、なんで、わたしだけがそれをおかしいと思わないのかしら?」ミセス・タワーがきいた。

(中略)

「それは、お姉さまが、ほんとのことをいわれても、ほんとだってわからないからじゃない?」ジェインはいつもの、ほがらかで、やさしい口調でいった。

まさに真実をついていて、ミセス・タワーは何もいえなかった。ジェインの言葉は常に、真実をついている。じつにまれなユーモアのセンスのある人だと思う。

ジゴロとジゴレット: モーム傑作選 (新潮文庫) , サマセット モーム (著), William Somerset Maugham (原著), 金原 瑞人 (翻訳)

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